HENRY ほんわか犬
雑種犬
推定1998年生まれ、♂、去勢済み

paw1.gif (869 bytes)解剖用の犬

アメリカのアジリティ友達、Lizがまだ獣医大学の学生だったころのお話。

車に轢かれて重傷を負った若い野良犬が、大学付属病院へ運ばれてきた。頭と全身を打ち、意識不明。体重40ポンド前後の雑種。大学側は、死んだら解剖実習に使う予定で犬をひきとったのである。クレートに転がされたまま放っておかれた犬を、 彼女は実習の合間に手当てをし世話をした。先輩達は「見込みないよ」と言ったが、犬は意識をとりもどし食べ物に口をつけるまでに回復した。野良犬といっても完全な野生犬でない証拠に、人間をおそれないし、ひとなつこい。飼い主が名乗り出ないから「野良犬」と呼ばれただけなのだ。

しかし大学側は解剖用にひきとったので、犬が死んでくれないと困る。いつまでも犬が居座って薬代や餌代がかさんでは、うまくないのだ。でも彼女は、瀕死の状態から奇跡的に回復し自分になついている犬を、致死処分することがどうしてもできなかった。彼女も若かったのだ。そこで、この子を自分でひきとることにした。

彼女の必死の介護のかいがあって、犬は歩けるまで回復した。しかしやはり事故の後遺症があるらしく、歩く時に体が斜めになったまま。周囲はみな「これは治らないよ」と悲観的で、彼女も一度はあきらめた。長生きはできないかもしれないけど、穏便な余生をおくってくれれば、と思った。 ところが、なぜか次第に回復してまともに歩けるどころか、元気に走り回れるようになったのである。

もともとの生命力が強い子だったのかもしれない。HENRYはおだやかな性格でもの覚えが良く、Lizのよき相棒となった。大学を終えて獣医となった彼女は、この子と服従訓練やアジリティを始めた。が、彼はコースを走ることにはあんまり興味がなかったらしく、すぐ引退。そのうちLIzはアジリティを続けるためにオーストラリアン・シェパードの子犬を手に入れ、HENRYは新しくできたこの弟分と一緒に暮らすことになった。

私達が初めてHENRYに会ったのは、秋のアジリティ・キャンプ。その時は推定10歳だったが、おとなしくてマイペース、いつ見ても「あ〜今日もいいお天気だねえ。木陰で昼寝するのが一番だよ」といった顔。ハイパーな弟分とは対照的な、ほんわかした犬。TABIとも気があって、キャビンの中では薪ストーブのそばで並んで寝ている二頭の姿がほほえましかった。もしかしたら彼は、自分が一度は見捨てられた命で、神様にセカンド・チャンスを与えられたことをわかっているのかもしれない。ハッピーエンドになって、良かったね、HENRY。

2013年6月12日)

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